17世紀のオランダはデルフトの画家、

ヨハネス・フェルメール(1632-1975)

 

日本でも大人気ですね。

 

フェルメールと言えば、日常画でありながら、気品溢れる

絵が有名です。時には妖気すら漂ってくるようなオーラが

ありますね。

 

この記事では、そのフェルメールの「気品」「妖気」を

青・フェルメールブルー

に求めてみたいと思います。

 

フェルメールと言えば「青」ですしね。

 

フェルメール・ブルー

(2017年筆者撮影)

 

フェルメールの青は、作品に気品をもたらし、静謐な雰囲気を

作り出しています。

 

実際に、フェルメールの青を「フェルメール・ブルー」と呼ぶことが

よくあります。

 

そして、このフェルメールの「青」にはストーリーがあります。

 

青は特別な色

赤や黄色は、自然界に多くの原料・天然染料があると言われています。

赤だと紅花、茜、辰砂(しんしゃ)等々ですね。

黄色も、酸化鉄が含まれた土などから、顔料を簡単に作る事が

できます。

 

もちろん、太古の昔から変わりません。

ですので、古代の洞窟絵画から、古墳の彩色にいたるまで、赤や

黄色はふんだんに使われてきました。

 

一方、「青」は赤や黄色とは少々状況が違います。

自然界に、「最初から青色をしたもの」は意外と少ないです

 

赤土、黄土とは言っても、「青土」とはあまり言いませんよね?

植物には一部、青っぽいものがありますが、それらは染色に

用いても、「鮮やかな青」にはなりづらいと言います。

 

つまり、科学が発達する以前、長い間、きれいな「青」を

人間が作り出すのは非常に難しかったといえます。

 

「青」は特別な色だったわけですね。

 

その後、徐々に「青」を植物等から作れるようになっていったと

言います(12世紀以降)。

 

その結果、「聖母マリア像」(の服)や紋章などに「青」が用いられ、

「市民権」を得ていき、ついには「もっとも高貴な色」と認識される

ようになったという歴史があります。

 

その辺りは、『青の歴史』(ミシェル・パストゥロー著)に詳しいです。

 

「ウルトラマリンブルー」へ

徐々に『青』を作り出せるようになった人類の欲望は、

「鮮やかな青の顔料」

に向かいます。

 

結果として、

希少な鉱物から「きれいな青」を作り出すようになります。

 

●アズライト

●ラピスラズリ

 

といった鉱物です。

 

ただし、これらの鉱物から「青」を、それも「鮮やかな青」

を作り出すには、それなりの手間・技術が必要なため、

「美しい青」は非常に高価な存在となります。

 

ちなみに、「アズライト」も「ラピスラズリ」もどちらも「青」を

作り出す鉱物ですが、より鮮やかな青は、ラピスラズリから

しか作り出せず、その青のみが、

「ウルトラマリンブルー」

の称号を許される事になります。

 

ラピスラズリはアズライト以上に貴重な鉱物で、今の

アフガニスタンやチリの一部でしか産出されないといいます。

 

鉱物として貴重であるだけでなく、そこから「ウルトラマリンブルー」

にしていく精製法も高度な技術が必要とされています。

 

そうなると、値段は跳ね上がりますよね?

結果として、ラピスラズリから作られた「ウルトラマリンブルー」の

値段はアズライトの10倍、金(ゴールド)とほぼ同じ値段になった

と言われています。

 

いわば、金で絵を描いているようなものです。

 

はい、そうです、

「ウルトラマリンブルー」こそ「フェルメールブルー」の

正体です。

 

「ウルトラマリンブルー」=「フェルメールブルー」

ここまで確認してきた、「人類が得た特別な青色」である、

ラピスラズリから精製された「ウルトラマリンブルー」と呼ばれる

色(顔料)こそが、「フェルメールブルー」の正体です。

 

つまり、われわれが、そしておそらくは未来・後世に生きる我々の

子孫が、フェルメール作品(ウルトラマリンブルーを使っているもの)

に感じる、「気品」「妖気」「美しさ」「静謐」といった、芸術上の要素は、

ウルトラマリンブルーによる所が多いと言えるのではないでしょうか?

もちろん、フェルメールの画家としての技量や実力があってという

前提ですが。

 

フェルメールの偉大さは「ウルトラマリンブルーの使い方」

ウルトラマリンブルーとフェルメールの関係はある程度分かりましたが、

もう一点大事な事は、ウルトラマリンブルーの使い方です。

 

既に書いたように、ウルトラマリンブルーは金と同程度の高価なもの

でした。ですので、使用する際にはかなりビクビクしながら使った

はずです。

 

また、「青」自体が、聖母マリアの衣服等、貴重な場所に使われる事が

多かったのも事実です。

 

が、17世紀のオランダ(プロテスタントの国)の画家であるフェルメールは、

そもそも日常画・風景画が多く、宗教画が少なく(まあ、作品自体が30数点

とかなり少ないですが)、牛乳を注ぐ女性や、少女のターバンや、はては机

にまでウルトラマリンブルーを使っています。

 

フェルメールのウルトラマリンブルーの使い方はまさに常識はずれと

言っていいでしょう。

 

ん? そもそも超高価なウルトラマリンブルーをなぜフェルメールは

ふんだんに使えたのでしょう?

 

ウルトラマリンブルーをなぜフェルメールはふんだんに使えたのか?

フェルメールが金持ちだった?

 

ノーです。残されている資料からは、彼は借金をしていたり、

子だくさん(11人とも言われています)だったりと自分は決して

裕福ではありませんでした。

 

ではなぜ、高価なウルトラマリンブルーをガンガン使えたのか?

 

フェルメールがウルトラマリンブルーをふんだんに使うようになった

時期、彼は妻の実家に引っ越しています。いわゆる「マスオさん」

ですね。

 

そして、フェルメールの妻の実家の母(義母)は、当時デルフト(フェルメール

が生まれ育った街)でも指折りの資産家だった事が分かっています。

デルフトは今も昔もオランダの地方小都市という感じだと思います。

 

そうすると、多数の孫を連れて妻の実家に入る(婿的な感じでしょうか?)

代わりに、絵画制作の資金援助を受けたのではないかという仮説が

成り立ちます。

 

まあ、17世紀のオランダの話ですから、なかなか実証は難しいですが。

 

 

いずれにせよ、もし仮に、フェルメールの妻の母(義母)が資金援助を

してくれたが故に我々人類が「フェルメールブルー」の作品を拝める

のだとしたら、義母は人類史に残るお金の使い方をしたと言えますね。